一郎 「ママ、そこで転んで血が出ちゃった。」
ママ 「あら、それじゃここにオキシドールがあるからつけておきなさい。」
一郎 「あれえ、泡が出てきたよ。どうしてなの。」
ママ 「オキシドールというのはね、過酸化水素(H2O2)の水溶液なのよ。過酸化水素は傷口につけると水(H2O)と酸素(O2)に分解されるの。この酸素が泡のもとで、ききめのもとになるのよ。泡が出なかったらぜんぜん効かないのよ。」
一郎 「ふうん、泡がどうして消毒になるの。」
ママ 「酸素に殺菌作用があるの。でもね、それほど強くないの。消毒薬の標準とされる石炭酸の百分の一ぐらいかしら。」
一郎 「それじゃあまり効かないんだね。」
ママ 「ただしね、この泡が傷の中の泥やばい菌を洗い出してくれるのよ。昔はね、今とちがって道路が舗装されていなかったでしょ。地面ですりむくと泥の中の破傷風というばい菌がとても怖かったのよ。今みたいに予防注射はなかったのね。この破傷風菌は酸素に弱いの。それでオキシドールがよく使われたのよ。」
一郎 「じゃあ今はあまり使われないの。」
ママ 「そう、医師は特にね。歯医者さんとか耳鼻科が使うぐらいかしら。いつだったか食べ物の漂白に使った過酸化水素に発がん性があるとかいわれて問題になったこともあったわ。それで食品中に残ってはいけなくなったの。でも傷につける分にはぜんぜん心配ないのよ。」
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